詐欺
10年以下の懲役(刑法246条)
(1)罪の概要説明
詐欺罪は,人をだましてお金や物などの財産や利益を交付させた場合に成立する犯罪です。
人をだますと言っても,普段の生活でつくすべての嘘が刑法上の詐欺罪にあたるわけではなく,相手の財産の交付に向けられてウソがつかれた場合に,詐欺罪が成立する可能性があります。たとえば,最初からお金を支払うつもりがないのに飲食店で料理を注文して食事をしたり,病気を完治させる効用がないにも関わらずそのような効用があると偽って高額な壺などを買わせた場合には,詐欺罪が成立することになります。
他にも,子や孫を装って電話をかけ,交通事故を起こしたため示談金が必要であるなどと嘘の事実を伝え口座に送金させるいわゆる振り込め詐欺や,実態のない会社の株式を不当に高い値段で買わせる投資詐欺などでも,同じく詐欺罪が成立します。
(2)弁護方針
実際には詐欺をしていないにも関わらず捜査機関から一方的に詐欺の容疑をかけられてしまった場合には,弁護人を通じて捜査機関の主張が十分な証拠に裏付けられていないことを指摘し,不起訴処分に持ち込む弁護活動をしていくことになります。その際には,最初から相手をだますつもりがあったのかという点が重要なポイントになってきますので,弁護人としては,本人が被害者から交付を受けたお金を返す意志があったことや,資金的にも返す能力があったことなど,最初からだますつもりがなかった(返すつもりであった)という主張を,証拠に基づいて行っていくことになります。
また,実際に詐欺を犯してしまった場合でも,刑務所に入らないようにするためには,執行猶予付きの判決を得る必要があります。そのため,弁護人を通じて事実関係を詳しく調査し,被害者に謝罪の意思を伝えたり,被害の弁償を行うなど,早期に示談成立に向けて活動していくことが重要になってきます。さらに,犯行に及んでしまった動機や被害額などを考慮して酌むべき事情があるのであれば,そのような事情を慎重に検討し,裁判所に対し執行猶予付きの判決を求めるための適切な主張・立証を行っていくことになります。